ハイレゾイヤホンを購入しても「意味がない」「違いが分からない」と感じるケースは少なくありません。結論から申し上げますと、再生環境や音源の設定など、特定の条件が揃っていない状態でイヤホンだけを交換しても、ハイレゾの恩恵を受けることはほぼ不可能です。しかし、これは「ハイレゾという規格自体に意味がない」ということではありません。
ボトルネックとなっている原因を一つずつ解消し、正しい手順で再生環境を整えれば、今まで聴こえなかった息遣いや空間の広がりを体験することができます。この記事では、なぜハイレゾイヤホンが意味ないと言われてしまうのか、その12の理由を論理的に解説し、スマートフォンやワイヤレス環境でも確実に音質を向上させるための具体的な方法を提示します。
1. ハイレゾとは何か:基礎知識と定義
ハイレゾイヤホンが意味ないかどうかを判断するためには、まずハイレゾという言葉が何を指しているのか、その技術的な定義を正確に理解する必要があります。漠然と「音が良いもの」と捉えているだけでは、機材選びで失敗する可能性が高まります。
1-1. ハイレゾリューションオーディオの定義
ハイレゾとはハイレゾリューションオーディオ(High-Resolution Audio)の略称であり、従来のCD規格を超える情報量を持つ音源のことを指します。日本オーディオ協会やJEITA(電子情報技術産業協会)による定義では、量子化ビット数とサンプリング周波数のいずれかがCDスペックを超えていることが要件とされています。
具体的には、CDの規格である「44.1kHz/16bit」を超えるデータ量を持つものがハイレゾと呼ばれます。一般的には「96kHz/24bit」や「192kHz/24bit」といった形式で配信されることが多く、最近ではストリーミングサービスでもこの規格が採用されるようになっています。
1-2. サンプリング周波数とビット深度の意味
ハイレゾを理解する上で避けて通れないのが、サンプリング周波数とビット深度という2つの数値です。これらはアナログの波形である音をデジタルデータに変換する際の「細かさ」を表しています。
サンプリング周波数(kHz)は、1秒間に何回音を切り取って記録するかを表す数値です。この数値が高いほど、より高い音域(高周波)まで記録することが可能になります。CDの44.1kHzでは約20kHzまでの高音しか記録できませんが、ハイレゾの96kHzであれば理論上は約48kHzまでの超高音域を記録できます。これは音の滑らかさや空気感に関係します。
ビット深度(bit)は、音の大きさの強弱をどれだけ細かく段階分けして記録するかを表す数値です。この数値が高いほど、非常に小さな音から大きな音までを繊細に描き分けることができます。CDの16bitは約6万5千段階ですが、ハイレゾの24bitになると約1677万段階にもなります。これにより、音が消え入る瞬間の余韻や、微細なニュアンスが再現可能になります。
1-3. CD音質とハイレゾ音質の数値的な違い
CDの情報量とハイレゾの情報量を比較すると、その差は歴然としています。96kHz/24bitのハイレゾ音源は、CD(44.1kHz/16bit)と比較して、情報量がおよそ3倍から6.5倍程度多くなります。
例えるなら、CD音質は画素の粗いDVD映像のようなものであり、ハイレゾ音質は4K映像のようなものです。遠目で見れば同じ映像に見えても、近づいて細部を確認すると、その解像度の違いは明らかです。音の世界でも同様に、歌手の口元の動きや楽器の配置、録音現場の空気感といった「見えなかった音」がデータとして存在しているのがハイレゾの最大の特徴です。
2. 結論:ハイレゾイヤホンは意味ないのか
多くの読者が最も知りたいであろう結論について、包み隠さずお伝えします。ハイレゾイヤホンが意味あるものになるか、無意味なものになるかは、使用する環境と条件に完全に依存します。
2-1. 「意味ない」となってしまうケース
再生機器(スマートフォンやプレイヤー)、音源データ、そして接続方法のいずれか一つでもハイレゾに対応していない場合、ハイレゾイヤホンを使う意味はほとんどありません。これは「ボトルネック」の原理です。どんなに高性能なイヤホンを使っても、入り口となる音がCD画質以下であれば、イヤホンはその粗い音を忠実に再生するだけだからです。また、騒音の多い場所でのリスニングや、録音状態の悪い古い音源を聴く場合も、その差を感じ取ることは極めて困難です。
2-2. 「意味がある」と実感できるケース
一方で、再生経路の全て(音源、DAC、アンプ、ケーブル、イヤホン)が高品質なデータ転送に対応しており、かつ静寂な環境で聴取する場合、ハイレゾイヤホンは劇的な変化をもたらします。特に、生楽器を使用したジャズやクラシック、ボーカルの息遣いが重要なポップスなどでは、まるで目の前で演奏されているかのようなリアリティを感じることができます。この体験こそが、多くのオーディオファンがハイレゾを追求する理由です。
3. ハイレゾイヤホンが意味ないと言われる12の理由
なぜ世間では「ハイレゾは意味ない」「オカルトだ」と言われることが多いのでしょうか。そこには技術的な限界から心理的な要因まで、複合的な理由が存在します。ここでは競合記事でも触れられている論点をさらに深掘りし、12の具体的な理由と原因を解説します。
3-1. 人間の可聴域(20kHzの壁)を超えているため
最も科学的かつ頻繁に挙げられる理由が、人間の聴覚限界です。一般的に健康な成人が聴き取れる周波数は20Hzから20kHzまでとされています。ハイレゾの特徴である40kHz以上の超高音域は、そもそも人間の耳には聴こえない音です。「聴こえない音を再生しても意味がない」という主張は、生理学的に見れば正論と言えます。
3-2. 音源自体が「なんちゃってハイレゾ」である可能性
配信されているハイレゾ音源の中には、元々CD品質で録音されたデータをデジタル処理で無理やりハイレゾ形式に引き伸ばしただけのもの(アップコンバート音源)が存在します。元の情報量が増えているわけではないため、器だけが大きくなっても中身はスカスカの状態です。これを聴いても音質の向上を感じることはできません。これをニセハイレゾと呼ぶこともあります。
3-3. スマートフォン内部のDAC性能不足
スマートフォンにはデジタル信号をアナログ信号に変換するDAC(D/Aコンバーター)というチップが内蔵されていますが、一般的なスマホのDACは省電力とコストダウンを優先しており、ハイレゾの膨大な情報を正確に処理する能力が不足している場合があります。結果として、ノイズが乗ったり、情報が欠落した状態でイヤホンに出力されてしまいます。
3-4. Bluetooth接続による不可逆圧縮
ワイヤレスイヤホン全盛の現代において、最も大きな壁がBluetoothの伝送帯域です。Bluetoothで音声を飛ばす際、データは一度圧縮されます。標準的なコーデック(SBCやAAC)では、ハイレゾのデータ量は大きすぎて送ることができず、大幅にカットされてCD以下の品質になってしまいます。ハイレゾ対応イヤホンを使っていても、入り口でデータが捨てられていれば意味がありません。
3-5. マスタリングエンジニアの意図と加工
現代のポピュラー音楽、特にロックやEDMなどは、音圧を上げて迫力を出す「音圧競争」の影響を受けています。このマスタリング過程でダイナミックレンジ(音の大小の幅)が圧縮されている楽曲が多く、ハイレゾの強みである「微細な音の強弱」が最初から潰されていることがあります。この場合、フォーマットがハイレゾでも恩恵は少なくなります。
3-6. 生活騒音によるマスキング効果
ハイレゾの繊細な違いは、極めて小さな音の成分に現れます。しかし、通勤電車の中や街中のカフェなど、周囲の騒音が大きい場所では、その微細な音が騒音にかき消されてしまいます(マスキング効果)。静かな防音室で聴けば分かる違いも、日常の喧騒の中では判別不能になることが多いのです。
3-7. イヤホンの「ハイレゾ対応」シールの基準
日本オーディオ協会が定めるハイレゾロゴマークは、40kHz以上の高域再生が可能であることを示していますが、これは「40kHzの音が出る」という物理的なスペックを保証するものであり、「音が良い」ことを保証するものではありません。安価なイヤホンでも高域さえ出ればロゴを取得できるため、全体のバランスが悪い機種も存在します。ロゴがあるから高音質であるとは限らないのです。
3-8. 音量レベルによる聴こえ方の変化
人間の耳は、音が大きくなるほど低音と高音が聴き取りやすくなる特性(ラウドネス曲線)を持っています。比較試聴をする際、ハイレゾ音源とCD音源で微妙に音量が異なると、単に「音が大きい方が音が良い」と錯覚してしまいます。厳密に同じ音量で比較しない限り、純粋なフォーマットの違いを判断するのは困難です。
3-9. プラシーボ効果(思い込み)
「ハイレゾだから音が良いはずだ」という強い先入観が、脳内で音を補正してしまうことがあります。実際にブラインドテスト(目隠しテスト)を行うと、ハイレゾとCD音質の違いを正確に当てられる人は一般層では非常に少ないという実験結果も多く存在します。この事実が「意味ない説」を補強しています。
3-10. ケーブルや端子の品質
有線イヤホンの場合、ケーブルの材質やプラグのメッキ処理、ジャックの接触抵抗などが音質に影響を与えます。ハイレゾの情報量は膨大であるため、粗悪なケーブルや変換アダプタを使用すると、信号のロスや劣化が発生しやすくなります。高価なイヤホンを買っても、接続ケーブルが安価な付属品のままだと性能を発揮しきれません。
3-11. OSやアプリの自動変換機能(SRC)
AndroidスマートフォンなどのOSには、複数のアプリの音を混ぜて出力するために、サンプリングレートを強制的に48kHzなどに変換する機能(SRC:Sample Rate Conversion)が備わっています。ユーザーが96kHzのハイレゾ音源を再生していても、OSが勝手にダウンコンバートして出力してしまっているケースが多々あります。これを知らずに聴いている場合、実際にはハイレゾを聴けていません。
3-12. 加齢による聴力の低下
非常にシビアな話ですが、人間の高音域を聴き取る能力は年齢とともに低下します。10代では20kHz近くまで聴こえていた人も、40代、50代になると15kHz以下しか聴こえなくなることは自然な現象です。ハイレゾの特徴である超高音域の成分を、物理的に耳が捉えられなくなっている場合、その違いを感じることは難しくなります。
4. 違いが分かる人/分かりにくい人の条件
ハイレゾの価値は、受け手側の条件によっても大きく変わります。どのような人が違いを享受できるのかを整理します。
4-1. 違いが分かる人の条件
- 静寂な環境: 自室や静かな書斎など、暗騒音(バックグラウンドノイズ)が極めて低い場所で聴いている。
- 聴き方の焦点: メロディを追うのではなく、音の余韻、楽器の配置、スタジオの空気感、ボーカルのブレス(息継ぎ)などに意識を向けている。
- 経験値: 生楽器の音を知っている、あるいは普段から高音質なオーディオに触れており、音の基準を持っている。
- 適切な音源選定: クラシック、ジャズ、アコースティック音源など、ダイナミックレンジが広く、空間表現が重視された録音を好む。
4-2. 違いが分かりにくい人の条件
- 騒音環境: 電車、バス、人混みの中で聴くことが多い。
- ジャンルの相性: 音圧が常に高く、電気的に加工された音が中心のハードロック、EDM、一部のJ-POPなどを主に聴く。
- 「ながら聴き」: 作業中や移動中にBGMとして音楽を流しており、音の細部に集中していない。
- 機材のアンバランス: イヤホンだけ高級で、再生機器や音源にお金をかけていない。
5. iPhoneでハイレゾは意味ない?その理由と対策
iPhoneユーザーにとって、ハイレゾ再生は少し複雑な事情があります。iPhone単体ではハイレゾの真価を発揮できない構造的な理由があるためです。
5-1. iPhone単体での限界
iPhoneに付属していたLightning-3.5mm変換アダプタや、標準の内蔵スピーカー、Bluetooth接続(AACコーデック)は、最大でも48kHz/24bitまでの出力、またはロッシー圧縮された音質に制限されています。Apple Musicで「ハイレゾロスレス」の設定をオンにしても、iPhone本体から直接音を出す場合や、標準的な変換ケーブルを使っている限り、96kHz以上のハイレゾデータはダウンコンバートされて再生されます。つまり、設定画面上はハイレゾでも、耳に届く音はハイレゾではありません。
5-2. iPhoneでハイレゾを聴くための例外条件(対策)
iPhoneで本来のハイレゾ音質(最大192kHz/24bitなど)を楽しむためには、「外部DAC(ダック)」と呼ばれる機器が必須です。これはiPhoneのデジタルデータをLightning端子やUSB-C端子から取り出し、外部で高精度にアナログ変換する装置です。
iPhoneに「スティック型DAC」や「ポータブルヘッドホンアンプ」を接続し、そこに有線のハイレゾ対応イヤホンを繋ぐことで、初めてApple Musicのハイレゾロスレスの全データを劣化なく再生可能になります。
6. Androidならハイレゾは簡単なのか?
AndroidはiPhoneに比べて自由度が高いと思われがちですが、ここにも落とし穴があります。
6-1. Android特有の「SRC問題」
前述した通り、Android OSには標準で全ての音を48kHz/16bitなどに変換して出力する仕様(SRC)があります。これは、たとえハイレゾ対応を謳うスマートフォンであっても、標準のミュージックプレイヤー以外で再生する場合や、ハードウェアの設計によっては回避できないことがあります。Amazon Music Unlimitedなどで「Ultra HD」と表示されていても、内部処理でダウンサイジングされているケースが多々あります。
6-2. SRCを回避する方法(対策)
この問題を解決するためには、SRCを回避できる特殊な処理を行った音楽再生アプリ(例:USB Audio Player PRO、Neuronなど)を使用するか、SRC回避機能を持つ特定のメーカー製スマートフォン(Xperiaの一部モデルやDAP機能付きスマホなど)を選ぶ必要があります。または、iPhone同様にUSB端子からデジタル出力し、外部DACを経由させることで、OSの干渉を受けずに純粋なデータを取り出すことができます。
7. Bluetooth(ワイヤレス)でハイレゾは意味ない?
ワイヤレスイヤホン市場の拡大に伴い、「ハイレゾワイヤレス」という言葉も定着してきました。しかし、有線のハイレゾとは仕組みが異なります。
7-1. Bluetoothの帯域制限と圧縮
Bluetoothは無線通信であり、送れるデータ量(帯域幅)に厳しい制限があります。有線のように大容量のデータをそのまま流すことはできません。そのため、必ずデータを小さく畳む「圧縮」が行われます。この時点で、厳密な意味での「ロスレス(無劣化)」ではなくなります。したがって、原理主義的な視点では「ワイヤレスで完全なハイレゾは不可能」と言えます。
7-2. 「ハイレゾワイヤレス」が意味あるものになる条件
しかし、技術の進歩により「ハイレゾ相当」の音質を伝送できるコーデックが登場しました。それが「LDAC(エルダック)」や「aptX Adaptive(アプトエックスアダプティブ)」です。
- LDAC: 最大990kbpsの転送レートを持ち、ハイレゾ音源の情報を多くのこしたまま伝送できます。日本オーディオ協会の「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴも取得可能です。
- aptX Adaptive: 通信状況に応じてレートを可変させますが、最大96kHz/24bitの伝送に対応しています。
「意味ない」と言われるのはSBCやAACなどの低ビットレートコーデックで接続している場合です。送信側(スマホ)と受信側(イヤホン)の両方がLDACなどの高音質コーデックに対応していれば、有線に肉薄する高音質を楽しむことができ、十分に「意味がある」体験が得られます。
8. 必要なもの/不要なもの:ハイレゾ再生の最小構成
ハイレゾを正しく楽しむために、絶対に揃えるべきものと、必ずしも必要ではないものを明確にします。これらが揃っていないと、投資が無駄になります。
8-1. 絶対に必要なもの(必須アイテム)
以下の7点は、ハイレゾのバケツリレーを完結させるために不可欠です。
- ハイレゾ音源データ: FLAC、WAV、DSD、MQA形式などのファイル、またはApple Music、Amazon Musicなどのハイレゾストリーミング契約。
- ハイレゾ対応プレイヤーアプリ: ハイレゾデータを正しくデコード(解釈)できる再生ソフト。
- デジタル出力可能な親機: スマートフォン、PC、またはデジタルオーディオプレイヤー(DAP)。
- DAC(D/Aコンバーター): デジタル信号を高精度にアナログ化する心臓部。スマホ内蔵のものではなく、外部接続タイプ(ドングル型など)やDAP内蔵の高品質なものが望ましい。
- アンプ: 変換されたアナログ信号を増幅し、イヤホンを駆動する力。通常はDACと一体化しています。
- ハイレゾ対応イヤホン: 再生周波数帯域が40kHz以上に対応しているもの。
- 密閉性の高いイヤーピース: 耳とイヤホンの隙間を埋め、微細な音を逃さないための重要なパーツ。
8-2. 必ずしも必要ではないもの(または注意点)
- 過剰に高価なケーブル: 数万円するケーブルは音色を変えますが、初心者が最初に投資すべき場所ではありません。まずはDACやイヤホン本体にお金をかけるべきです。
- 「ハイレゾ対応」と書かれただけの安価なSDカード: データの読み出し速度が遅いと再生が止まることがありますが、音質そのものには影響しません。信頼性のあるメーカーの通常のクラス10以上であれば十分です。
- 超高額なDAP: 最初から10万円以上のプレイヤーを買う必要はありません。スマホ+外部DACの組み合わせで、数万円クラスのDAPに匹敵する音質は実現可能です。
9. 違いが分かりやすい聴き方とジャンル
せっかく環境を整えても、聴き方が間違っていれば違いを感じ取れません。効果的な比較手順を紹介します。
9-1. 環境を整える
まず、静かな部屋を確保してください。エアコンの送風音や冷蔵庫の音もノイズになります。そして、リラックスした状態で目を閉じて聴覚に集中します。視覚情報を遮断することで、脳の処理能力を聴覚に割り振ることができます。
9-2. 試聴におすすめのジャンルとポイント
- 女性ボーカル: サ行の刺さり具合や、息を吸い込む音(ブレス)のリアルさに注目してください。ハイレゾの方がより生々しく、湿り気を感じるような質感になります。
- クラシック(オーケストラ): 楽器の数が増えても音が団子にならず、それぞれの楽器の位置関係(定位)が分かるかどうかに注目します。
- ライブ録音: 演奏が終わった後の拍手の音や、会場の残響音(リバーブ)の消え際に注目します。音がプツンと切れるのではなく、空間に溶けていく様子がハイレゾの見せ場です。
9-3. A/Bテストの手順
同じ楽曲の「CD音質版(または圧縮音源)」と「ハイレゾ版」を用意します。音量を厳密に合わせ、特定の10秒間を繰り返し聴き比べます。全体を流し聴きするのではなく、シンバルの余韻など「特定の音」に絞って比較すると違いが分かりやすくなります。
10. 初めて試す人向けの現実的な手順
これからハイレゾを体験したい方が、無駄な出費を抑えつつ確実に効果を実感するためのステップを紹介します。
ステップ1:現状のスマホを活用する
まずは新しいプレイヤーを買わず、手持ちのiPhoneやAndroidスマホを使います。
ステップ2:ストリーミングサービスの設定確認
Apple MusicやAmazon Music Unlimitedの設定画面で、再生品質を「ハイレゾロスレス」や「Ultra HD」に設定し、Wi-Fi環境で楽曲をダウンロードします。
ステップ3:スティック型DACを購入する
5,000円〜15,000円程度の「スティック型DAC(ドングルDAC)」を購入します。これだけでスマホ直挿しとは別次元の音になります。有名なメーカー(FiiO、iBasso、Shanlingなど)のエントリーモデルで十分です。
ステップ4:評価の高い有線イヤホンを用意する
5,000円〜10,000円前後のハイレゾ対応有線イヤホンを用意します。中華イヤホンと呼ばれるカテゴリには、安価でも驚くほど高性能なモデルが存在します。
ステップ5:有線接続で聴く
スマホ → DAC → イヤホン の順で接続し、静かな部屋で試聴します。これが最もコストパフォーマンス良くハイレゾの真価を体験できる最小構成です。
11. よくある質問(FAQ)
ここでは、ハイレゾイヤホンに関する素朴な疑問や専門的な質問に回答します。
Q1. Spotifyはハイレゾですか?
いいえ、現在のSpotifyの最高音質は320kbpsの圧縮音源であり、ハイレゾではありません。Spotify HiFiという高音質プランが発表されていますが、提供開始時期は未定です。
Q2. YouTubeでハイレゾ動画を見ればハイレゾ音質ですか?
いいえ、YouTubeの音声は基本的に圧縮されており(OpusやAACなど)、ハイレゾ品質ではありません。動画タイトルに「Hi-Res」と書かれていても、再生される音声データ自体はカットされています。
Q3. 高いイヤホンを買えば、MP3やYouTubeの音も良くなりますか?
はい、良くなります。ハイレゾの情報量は復元できませんが、高性能なイヤホンは基本的な解像度や分離能力が高いため、圧縮音源であっても今まで聴こえなかった音が聴こえるようになります。ただし、圧縮音源特有の粗(ノイズや歪み)も目立ってしまうことがあります。
Q4. ノイズキャンセリング機能はハイレゾ再生に影響しますか?
ノイズキャンセリングは周囲の騒音を消すため、静寂な背景を作れるという意味でハイレゾの微細な音を聴き取りやすくするメリットがあります。しかし、デジタル処理でノイズを消す過程で、音質そのものにわずかな変化を与える場合もあります。最近の高級モデルでは音質への影響は最小限に抑えられています。
Q5. ハイレゾを聴くのに「エージング(慣らし運転)」は必要ですか?
イヤホンの振動板を馴染ませるエージングは一定の効果があると言われていますが、ハイレゾだから特別に必要というわけではありません。購入直後から十分に楽しめますが、数十時間使うことで音が滑らかになる機種もあります。過度に気にする必要はありません。
Q6. 「DSD」と「FLAC」はどう違いますか?
どちらもハイレゾ音源の形式ですが、記録方式が異なります。FLACはPCM方式という一般的かつ扱いやすい形式です。DSDは1bitで超高速サンプリングを行う方式で、よりアナログに近く滑らかな音が特徴ですが、再生できる機器が限られます。初心者はまずFLACから入るのが無難です。
Q7. ハイレゾ級に「アップスケーリング」する技術は効果がありますか?
ソニーのDSEE Ultimateなどが有名ですが、これらは圧縮で失われた高音域をAIやアルゴリズムで予測して復元する技術です。本物のハイレゾと全く同じになるわけではありませんが、聴感上の密度感や空気感は確実に向上し、圧縮音源をより心地よく聴くことができます。
Q8. 40代、50代でもハイレゾの違いは分かりますか?
はい、分かります。高音域の聴力は低下していても、ハイレゾの恩恵である「音の立ち上がりの良さ」「空間の奥行き」「音色の自然さ」は周波数だけの問題ではないため、十分に感じ取ることができます。むしろ経験豊富な年代の方が、音の豊かさを敏感に感じ取れることも多いです。
Q9. 192kHzは96kHzよりも明らかに音が良いですか?
数値上は2倍の情報量ですが、聴感上の差は96kHzとCD(44.1kHz)の差ほど劇的ではありません。多くのオーディオファンにとっても、96kHz/24bitがあれば十分高品質であり、192kHzとの違いを聞き分けるのは至難の業です。数値にこだわりすぎず、録音の良し悪しを重視することをお勧めします。
Q10. バランス接続とは何ですか?ハイレゾに必須ですか?
バランス接続は、左右の信号を完全に分離して伝送し、ノイズを減らしてパワーを稼ぐ接続方式です(4.4mmプラグなどが使われます)。必須ではありませんが、ハイレゾの持つ空間表現や分離感を最大限に引き出すためには非常に有効な手段です。ステップアップとして検討する価値があります。
Q11. ハイレゾ対応のワイヤレスイヤホンで、iPhoneにつなぐとどうなりますか?
iPhoneはLDACなどのハイレゾコーデックに対応していないため、AAC接続となります。イヤホン自体の性能が良ければ高音質で聴けますが、データ転送の時点ではハイレゾ品質ではありません。
Q12. 結局、いくらくらいかければ満足できますか?
上を見ればきりがありませんが、スマホを親機にする場合、DACに約1万円、有線イヤホンに約1万円、合計2万円程度の追加投資で、劇的な音質向上が体験できます。まずはこのラインから始めるのが最もコストパフォーマンスが高いです。
12. まとめ:ハイレゾイヤホンは環境を整える人には「意味がある」
「ハイレゾイヤホン 意味ない」という検索ワードに対する最終的な答えをまとめます。
- 環境不備なら意味がない: スマホ直挿し、Bluetoothの低音質接続、騒音環境、YouTube再生などの条件下では、どれほど高価なハイレゾイヤホンを使ってもその真価は発揮されず、宝の持ち腐れとなります。
- ボトルネックの解消が鍵: 音源、DAC、アンプ、イヤホンという音の通り道の全てがハイレゾに対応して初めて、意味のある音になります。特にスマホユーザーにとっては「外部DAC」の導入が最大の分かれ道です。
- 聴き手の意識: 音楽をBGMとして流すのではなく、音そのものの質感や空間表現に耳を傾ける没入型のリスニングスタイルにおいて、ハイレゾは圧倒的な感動をもたらします。
ハイレゾは魔法の杖ではありませんが、正しい手順と知識を持って接すれば、お気に入りの楽曲から「こんな音が鳴っていたのか」という新しい発見を与えてくれる素晴らしい技術です。まずは手軽なスティック型DACと有線イヤホンから、本物の高音質体験を始めてみてはいかがでしょうか。

